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阪神淡路大震災から20年 

避難所船構想実現のステージへ 

―シンポジウム開催― 

元トルコ留学生 今住 章浩 v1

当研究室から、トルコ イスタンブール工科大学へ留学中の今住君より お便りが届きました!


イスタンブール工科大学海事学部 Istanbul Teknik Universitesi Denizcilik Fakultesi今住章浩 魅惑の地イスタンブールに来て、早くも3ヶ月が経過しました。 ようやくトルコの生活にも慣れ、この手記を書くに至りました。 記念すべき第1回目はこちらの大学の紹介をします。 私が現在お世話になっているイスタンブール工科大学には11の学部があり、その 1つの海事学部は、イスタンブール市から70km離れた東の端、マルマラ海に面 したTuzla という小さな田舎町に位置します。Tuzla はイスタンブール 市街の喧騒とは無縁の静かなリゾート地(?)で、落ち着いて勉強するのにはもって こいの場所だと言えます。 この学部には航海学科と機関学科とがあり、現在およそ570名の学生が日々勉学 に励んでいます。就学期間は日本と同じく4年間ですが、入学時に英語の不得意な 学生には、専門科目を学ぶ前に最長1年間の英語を学ぶためだけのクラスがあります。 ちなみにトルコ共和国の公用語はトルコ語です。 船員に英語力が不可欠なのはどこも同じで、この学部の講義には英語とトルコ語の 両方とも使用されます。 そのため、こちらの大学生は皆英語が堪能で、外国人の私が話し掛けてもコミュニ ケーションに困ることはありません。それどころか非常に流暢に英語を扱う学生も おり、日本の大学院生代表として私も負けるわけにはいかず、不得意な英語を日々 訓練しております。 大学院には、海事輸送工学科があり、修士課程にはおよそ20名、博士課程には3 名の学生が在籍しています。ここで日本のシステムと大きく異なることは、大学院 生はただの学生ではなく、皆既に大学生や研修生に講義をしています。 学生というよりは教員に近い存在です。 この大学は日本と同じように附属の練習船“Akdeniz(アクデニズ:トルコ 語で地中海という意味)”を所有しております。主要目は、総トン数7864t、 全長148m、幅18.6mという深江丸とは段違いの大きさの練習船です。 客船として使用されていたものの払い下げらしく、船室数は120室、最大搭載人員 は学生350人、乗組員80人の合計430人です。 しかしながら、この練習船は航海することはなく、常にキャンパス沖のマルマラ海 に錨泊しています。 そのため、大学生の航海実習は、トルコ国内の海運企業の社船で行われます。 練習船では、主にチッピングなどのデッキ作業を経験します。 その他にJICAの協力によって近年導入された新たな設備として操船シミュレータ エンジンルームシミュレータ、GMDSSシミュレータ、ARPA-RADARシミ ュレータ、タンカーシミュレータ、VTSシミュレータがあります。 これらの設備は学生の実習だけではなく、実務者の研修にも使用されています。 私の主観的な感想を述べさせていただくと、こちらの大学は神戸大学を含めた日本の 教育機関に比べて設備などの環境が著しく劣ります。パソコンやその他の研究機器の 不足はもちろんのこと、前述した航海しない練習船の存在など、日本人学生には耳を 疑うようなことがこちらの現状です。そのような中で船員教育の向上を図るにはどう すればよいか、また、どのように研究を発展させていくかという課題に対して積極的 に取り組んでいます。 これから船員を目指す学生や海外に職場を求める皆さんには、是非この現状を理解し ていただきたいと思います。 我が研究室もそうであるように、職場は多国籍の人達で溢れています。そこには色々 な文化が、考え方が存在します。育った環境、価値観が異なるのに自分の尺度を押し 付けることは極めて危険です。まずは話してみる。家のことや学校のこと、食事や行 事のこと。さらに踏み込んで経済や政治、宗教のこと。 必要があればアドバイスしたり、逆にされたり。時に口論に至ることがあるかもしれ ませんが、自分の意見を伝えること。それが相互理解への第一歩ではないでしょうか。 大切なのは知ることと受け入れること。気が付くとさっきよりお互いがずっと身近に 感じるはずです。今まで空白だったその国が、きっと色鮮やかな世界地図となって脳 裏に描かれることでしょう。 日本で生まれ育った私がトルコで痛感していることは、日本のスタンダードは決して グローバルスタンダードではないということです。 日本では当たり前だったことが実はそうでもない。ショックを受けたり、疑問を感じ たりすることも少なくありません。だからこそ日本人である私に何ができるのか、 彼らから何を学ぶかということを日々考え、様々なことに挑戦しています。 それを理解したとき、はじめて国際人の仲間入りができるのではないでしょうか。 私の留学に際してよく聞かれる質問の第1位は、「なぜトルコなの?」です。 その回答は、 1.トルコ海峡(イスタンブール海峡及びマルマラ海、チャナッカレ海峡の総称)の   交通管理の実態把握 2.国際海峡都市の抱える問題と有利性について 3.EU加盟など今後更なる発展が予想され、どのような海事政策を打ち出すのか 4.国際人としてのコミュニケーションスキルを養うため 5.おいしいトルコ料理と壮大な歴史に魅せられたから(笑) などが挙げられます。 また、国民の大部分がイスラム教徒ですので、価値観が異なることも多々あるので すが、日本では見えなかったことがこちらでは鮮明に見え、有意義な時間を過ごし ていると実感しております。 幸運にも神戸大学には様々な国への留学の土台が整っています。 興味のある人は是非このチャンスを掴んでください。 実りは少ないかもしれませんが、学生だからこそできることも多々あります。

 

トルコ - Turkey