〇Inoue海事科学研究所(井上研究室)へのアクセス、コンタクト等については、トップメニューの【アクセス】ボタンをクリックしてください。
【海事社会・人材流】に、混迷する次世代海技者育成教育を展望した井上名誉教授のオピニオンを取りまとめました。
海事教育維新】に、海事教育機関が国際化を推進するための具体化案を提言しています。
〇【船だからできること】に、将来の海事社会における人材確保を展望した井上名誉教授のオピニオンを取りまとめました。
井上名誉教授著書のご案内をクリックすると「著書出版と購入のご案内」にジャンプします。

阪神淡路大震災から20年 

避難所船構想実現のステージへ 

―シンポジウム開催― 

上海海事大学 商船学部 胡 志武 v3

上海海事大学 商船学部 胡 志武


井上先生

研究室の皆様

暑中お見舞いを申し上げます。
ここ数日、上海市が猛暑に見舞われ、最高気温は37℃に達しています。私どもは、お陰様で暑さにめげず無事暮らしておりますので、どうぞご放念下さい。久しぶりに操船研究室のホームページに拙文を投稿させていただきたいと思いました。昨日まで一週間金副学長の鞄持ちで中国西部の青海省(西寧)へ出張に行ってきました。まずは、その体験談をさせていただきます。

西部地域を訪れたのは初めてです。
空港を降り立って最初に目に入ったのは、風が吹けば黄砂が発塵しそうな黄土高原の山々。目のあたりに裸の傾斜地を見て、私の想像していた雄大な黄土高原とは遥かに違う様相に感動しました。開発し尽くされ、丸裸の黄土高原は胸が痛みます。

ko_1_1山奥で谷は深く、土地は痩せ、植生は乏しく、乾燥して雨が少なく、交通が不便なので、ここの生態環境は極めて劣悪で脆弱です。劣悪な生活条件にかかわらず、勾配30~40度の傾斜地に多数の人が暮らしているようです。こうした住民らによる開墾で、水土流失が深刻化している一方、穀物の生育状況も劣悪で、住民が貧しい生活を余儀なくされています。広い国土を持つ大国は、いずれも地域間の発展不均衡の問題を抱えています。960万平方キロの国土を擁する中国の経済発展は片方の翼を広げて飛ぶタカのように形象的に例えられています。これは、中国の東部が改革・開放の二十余年間に急速な発展を遂げてきたのに、西部が立ち遅れているという意味です。今では、中国政府が西部開発の強化を決定したため、このタカはもう片方の一翼をも間もなく広げて飛ぶようになり、中国全体の進歩もこのためにいっそう速くなるはずです。中国政府が「西部開発」の政策を提出して以来、青蔵高原東北部にある青海省の発展もかなり注目されています。

ko_2_2仕事や暮らしには報告に値するビッグニュースはありませんでした。あえて何か 探せば、2007年の上海海事大学の「臨港新城」にある新しいキャンパスへの移転に先立ち、教職員住宅団地の建設は殆ど完了しています。総建築面積は12万平米、団地総戸数は1200戸弱です。7月に私も市価より安い値段で1戸を購入。

 

 

 

 

ko_2_3ちなみに、東海大橋が陸地と接続する上海市南匯区は、高層ビルが立ち並ぶ上海の中心部から70km近く離れた農村地帯でした。そこでは、洋山深水港と一体で大規模な都市開発計画が動き出しています。「上海臨港新城」と呼ばれる開発区の総面積は約300平方km、東京23区(約620平方km)の実に半分に匹敵する大きさです。「臨港新城」には東海大橋と直結した保税区や物流団地に加え、広大な工業団地や住宅地が建設されます。上海中心部と結ぶ高速道路は既に開通、2009年には地下鉄も開通、2020年には100万人が暮らす上海最大の衛星都市になるという。仕事のほうは順調というか、いつもどおりというか、益々忙しくなりました。一年前から航海学科長に就任して以来、とにかく、会議やそのための出張が多くなりました。これらに時間が取られます。一方、落ち着いて勉強する時間がかなり減ってしまいました。一研究者としてじっくりと問題を考える時間がずいぶんと減ったように感じます。研究と教育とを両立させることが、すべての大学教員が果たすべき基本的な責務であることはいうまでもないですが、大学教員各人が有している時間は有限であり、研究と教育の両立は、あくまでもこの有限の時間の研究と教育への適正な配分を通して果たすべき責務だと思います。私は常に自分が良き研究者である前に、良き教育者でありたいと願っております。学生達は21世紀の中国の海事社会を支える中心的な存在として成長してもらわねばなりません。従って学生に対しては私の専門学問分野に関する教育と同時に、その分野に深く係わってきた自分の人生における信条や信念を伝授したい、という気持ちを強く持って教育しています。とりわけ学部や大学院における講義の場では、その科目に関する基礎教育を行っていることはもちろんですが,同時にそれらの学問周辺分野において、自分が若い人々(自分もまだ30路超えたばかりなんですが...)に伝える多くのメッセージを含んだ講義を行っています。講義ではOHPやビデオを取り入れ、学生に興味を持たせることに配慮しました。しかし、往々にして、OHPの授業ではノートを取らない学生が多いことに気付き、必ず書かせながら説明するといった工夫により理解度を高めました。まだまだ暑さが続きそうです。どうぞご自愛 下さいますようお願いいたします。

2006.8.15

中国 - China