災害時医療支援船構想 (構想からここまで・総括)


「海にも道がある」
災害時支援に「海を忘れていた」ということのないようにしたいものです




― プロジェクトの哲学 ―

「災害時医療支援船構想」の発想とこの取り組みは,事前に専用の船を用意するのではなく、特別の装備がない普通の船を災害発生時に即座に組織化して海からの支援を実現する、有事即応型の医療と海の社会連携である点が特徴です。


― 災害時医療支援船構想とは ―

医療の世界と海の世界が連携し,災害時に船舶を活用して医療活動の支援を行う構想を、具体化した活動であり、「災害時医療支援船構想」は、既に社会事業として着実に根付いてきています。ここまでに、国、自治体の支援に加えて、官民協力による支援船隊の充実は著しく進展しました。また、医療界と支援船の間を、情報通信で結ぶ中継基地としての「海陸連携支援システム」は、日本財団の助成を得てより一層、機能改善を図ることができました。2007年11月には、官産学民の参加を得て、神戸大学海事科学部において「災害時医療支援船構想」成果報告会が行われ、また、支援船クルーに対する「海陸連携支援システム」の運用説明会も実施されました。「災害時医療支援船構想」は、災害時に緊急医療の陰に隠れて、ややもすると救護の手が後回しになりかねない、慢性腎不全患者を対象に、医療界からの患者搬送ニーズ・資機材輸送ニーズを受けて、支援船隊が、これらを海上ルートで搬送するというコンセプトに基づく活動です。


― プロジェクトのこれから ―

2008年3月、徳島港で実施した訓練では、岸壁において医師による乗船前のトリアージが行われ、海上搬送可能な患者が選別されました。この時、トリアージにあたる医師には、搬送に要する航海時間に対して命が耐えられるかどうか、耐えられない命を優先させる陰で助かる可能性の高い患者を放置するのかといった究極の判断が迫られました。このように、搬送から取り残される患者の命を救う海からの支援、特別の装備がなくても普通の船ができること、しかし、船だからこそできる支援、これを具体的な形で実現するアイデアが「港頭加療」の提案であります。


― 港頭加療とは ―

港頭加療とは、コンテナを臨時病室に仕立てて、コンテナに組み込まれた加療機能を海から港に運び込むことにより、岸壁に臨時病院を設営しようとする発想である。このアイデアは図に解説するように、非被災地の近郊都市において、コンテナに医療機器をアッセンブル(組み込み)し、コンテナ(医療施設)ごと船、またはバージ(台船)で、被災地の港に運び込むものである。

災害時医療支援船プロジェクト