災害時医療支援船構想『新展開構想』を日本集団災害時学会講演会で発表

阪神淡路大震災から14年


2009.2.13
神戸国際会議場メインホール

医療の世界と海の世界が連携して、災害時に船を活用して医療支援を行う活動を具体化した本構想は、既に関西圏プロジェクトとして確立され、2007年11月に、産官学民の方々を招いて実施した、「災害時医療支援船構想プロジェクト成果報告会・海陸連携支援システム運用説明会」を経て着実に社会に根付きつつあります。


ここまでの活動は、災害時に往々にして支援の手が後回しになりがちな慢性腎不全患者を、近郊の港に船で搬送し透析維持を確保する活動を主な目的としてきました。その後2008年に入り、徳島における患者搬送訓練(2008年3月22日・23日)、日本透析医学会学術集会シンポジウム(2008年6月20日)、兵庫県透析研究会特別講演(2008年10月26日)での議論を通じて今後への展開について検討が重ねられ、この度、これらの成果を「日本集団災害医学会」第14回学術集会(2009年2月13、神戸国際会議場メインホール)において発表講演しました。


講演の概略


平生は健常者である維持透析の、患者搬送からクラッシュ症候群により、緊急透析が必要な患者に対する海上支援のあり方、また、岸壁での医師によるトリアージにより乗船できなかった患者に対する、海上からの医療支援の可能性をテーマに、
1.維持透析から緊急透析への海上支援の拡大の必要性について、
2.搬送から取り残された患者に対する港頭加療の実施について、そして,現場での運用をより実質的なものにするため、
3. 地域の基幹病院を核とした医療側と海側との協力連携について、
4.地域ベースの活動を核に、国ベースで総括することによる機能定着について解説する。


解説



緊急透析とは、慢性腎不全患者に対する平生の維持透析と区別して、クラッシュ症候群により緊急に人工透析が必要となった急性期患者に対する透析医療を指している。


港頭加療とは、新しい発想に基づく海上からの支援活動の具体化構想であり、近郊都市において、コンテナに医療機器をアッセンブル(組み込み)し、コンテナ(医療施設)ごと船またはバージ(台船)で、海から被災地の港に運び込むアイデアである。





【 井上教授からのメッセージ 】

災害時における医療支援に「海を忘れていた」ということのないように、医療界と海の世界の連携研究ならびに異業種間連携の進展を呼びかけたい。

災害時医療支援船プロジェクト